君をひたすら傷つけて
約束の二日後の朝は快晴だった。こんなに天気のいい日は気分が少し高揚する。でも、心の奥でどこか、手放しに喜べない私がいた。このCMの話が来てからのリズはどこか可笑しくて何かを隠しているように見える。私には言わない何かがある。

 お兄ちゃんの会社の受付に行くと既に連絡が入っていて、名前を言うとお兄ちゃんの名前さえ出さずに会議室に案内された。会議室と書いてあるけど、革張りのソファなどが配置されている豪勢な部屋だった。パイプ椅子が並ぶ会議室を想像していたから、最初からその雰囲気に呑まれてしまいそうになる。

 お兄ちゃんに会うのはあの日以来で気持ちの整理がついたかと言えばそうではなかった。私の中にあの日の心の奥底にある目に見えない傷は痛んでいて、どうお兄ちゃんに話せばいいのかさえ分からない。

今日はプライベートではなく、オフィシャルで来ているのだから、自分の気持ちは押し込めるつもりだけど上手く表情を隠せるかさえ分からない。ドキドキしすぎて心臓の音が周りに聞こえるのではないかとさえ思った。

「本当に大きな会社ね。ここまで大きなプロダクションだと思わなかった」

 リズはお兄ちゃんと面識はある。でも、仕事をするお兄ちゃんと会うのは初めて。そして、私も緊張している。豪華な会議室は座っているだけで緊張させた。

 会議室に入って五分もしないうちに会議室に入ってきたのは篠崎さんとお兄ちゃんだけだった。一流の俳優である篠崎海当人が単なる打ち合わせにくるとは思わなかった。契約でも何でもなく、詳しく話を聞くという段階だったから一瞬息が止まりそうなほど驚いた。

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