君をひたすら傷つけて
篠崎さんは自分の力だけで輝ける人だと思った。そして、その輝きをより一層輝かせることが出来るように手伝いをしたいと思うのは人徳なのかもしれない。エマは資料を見ながら頷いているけど、リズの表情は堅いままだった。

 リズは資料を見つめ、溜め息を零している。いつもは仕事に貪欲なリズがこんな大きな仕事に躊躇する理由が分からない。でも明らかに躊躇していた。

「ご説明ありがとうございました。一度、社に持ち帰ってお返事をさせて貰ってもいいですか?」

「勿論です」

 書類を見て、私はこの仕事を受けるべきだと思った。でも、即断しないかったエマの考えが読めない。この仕事はチャンスだった。

 エマの事務所でテーブルの上に置かれた資料を見ながら、皆が何も言わなかった。そして、何度も資料を捲っては、また最初から見直して溜め息と共に言葉が零れた。

「やっぱり、この仕事を受けたいと思う。でも、リズ一人では行かせられないから、リズと雅に行って欲しい。本当なら私が一緒に行くべきとは思うけど、社を立ち上げたばかりのこの時期に二人ともがニューヨークに行くことは出来ない。
篠崎さんと高取さんとの面識のある雅が行ってくれると本当に助かる」

 そう言ったのはエマだった。

 エマはどうしてもリズを一人でニューヨークに行かせたくないらしい。この場で言わないとなるとリズのプライベートなことだと思う。
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