君をひたすら傷つけて

橘聖という男

 フランス、シャルルドゴール空港からニューヨークの飛行機の移動は色々な方法があり、あらゆる都市を経由してからの空路と便は少ないが直行便もある。まりえが私の為に選んだ便は直行便でほぼ同時刻に日本からの直行便が到着するというものだった。

 それも少しだけ日本からの便が早いので、リズが私を待っていてくれることになっている。私が初めてのニューヨーク…ジョンエフケネディ空港で困らないようにとのことだった。篠崎海さんとお兄ちゃんはその前日にはニューヨーク入りしているとのことだった。

 私の手にはまりえから送られたチケットの情報と同時にリズの行動が書かれたもの。お兄ちゃんからはこの撮影についての注意事項と撮影日程が書かれたものがリズ経由で届いていた。アルベールのことを考えると私の気持ちは晴れない。でも、今は自分の仕事に頑張ろうと思う。

 入国審査が終わり、入国ゲートを抜けるとそこにはリズの姿があった。リズは私を見つめると目を細めて笑った。そして、ヒールの踵の音を立てながらやってくると私の手からスーツケースを取り上げた。

「リズ。ありがとう」

「ようこそ、ニューヨークへ。さ、早々に移動するわ。今日しか荷物を片付ける時間はないから」

 私とリズはお兄ちゃんの準備してくれたホテルの一室に宿泊することになっている。撮影の間はお兄ちゃんも篠崎さんも一緒のホテルに宿泊して、撮影の間中はずっと一緒に行動することになっていた。
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