君をひたすら傷つけて
 ニューヨークでの撮影は短い期間だったのにも関わらず、中身が濃いというか、緊張の毎日だった。日本に帰って来てから時差だけでなく、身体の中が疲弊しているのが自分でも分かるほどで、リズは慣れているからか半日で仕事に復帰し既に動き始めている。でも、私はさっぱり起きられる気配はなくしていたら、リズからベッドから出るのを禁止され、半分は強制的に二日の休みを与えられた。

 久しぶりのエマの事務所は随分と居心地のいい空間になっていた。段ボールが詰まっていた場所も今では応接セットまで置いてある。

 そんな中でまりえの働きは素晴らしかった。

 大きな倉庫は衣装や小物が所狭しと並んでいるし、最初は段ボールの中に入れたままだったのにそれが綺麗に整理され、ファイリングまでされてある。

 エマはリズからニューヨークでの仕事の報告を受けているのか、久しぶりに出社した私にニッコリと微笑んだ。

「雅。日本で仕事を一緒にしましょ?今から篠崎さんの事務所との仕事も増えるし、私だけではこなせないくらいのオファーが来ている。今回の篠崎さんのCMが放映されたら確実に仕事が増える」

「ありがとう。エマ。でもフランスに帰ろうと思うの。アルベールにも会いたいし、それに、ずっとフランスで仕事をしてきたから、ファッションの仕事はフランスの方が安定しているし。リズもイタリアに戻るの?」
< 635 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop