君をひたすら傷つけて
「私もこの事務所が落ち着き次第、イタリアに戻るつもりよ。あっちの事務所も任せっぱなしにしているし。それにエマ。日本での事務所はエマが仕切るって言っていたでしょ。私や雅を巻き込まないで」

リズは私のことを守ろうとしてくれている。日本にいるのが当たり前だった時とは違って、語学留学から始まったフランスでの生活は私の中で既に中心となっていた。エマの気持ちは正直嬉しい。ニューヨークでの仕事は忙しかった。そして、自分なりに満足を得られている。

 でも、それと私が日本で仕事をするというのは違う。

「巻き込むというか、雅がいたら、仕事が降ってきたの。だから、欲しい。考えてもみてよ。フランスで磨いてきたファッションのセンスは日本で発揮され、雅は他のスタイリストとは違うことが証明される。雅も慣れた日本の方が仕事しやすいでしょう」

「欲しいって言ってもダメ。雅には待っていてくれる人がいるから。まりえ、早々にチケットを頼んでおいて。この話はこれで終わり」

「エマじゃないけど、私も寂しいわ。せっかく、リズと雅と一緒にまた過ごせると思ったのに。本当に残念。一週間後にイタリアとフランスへのチケットを予約するわ」

「私もイタリアに行く前に雅と一緒にフランスに戻るわ。そして、それからイタリアに行く。二人とも欧州に行くのに別々の飛行機で行くのもね」

「わかった。じゃあ、一週間後ね」
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