君をひたすら傷つけて
 私は待ち合わせの時間の一時間前に起きると、シャワーを浴び、少し明るめの色合いのワンピースを着ると、ドレッサーの前に座っていた。自分で化粧をしようとしていた私を強引に鏡の前に座らせたのはリズだった。目を覚まして、動き出した私が何も言わなくても分かっていて、リズは少し青ざめた私の肌にいつもよりもチークを濃いめにさす。マスカラもだまにならないように丁寧に伸ばし、少し腫れ気味の瞼を誤魔化すように上向きにアイラインを引く。

「雅。用事が出来て、少しの間、一人にするけど大丈夫?」

 口紅を引いた後に、ハチミツの香りのするグロスを唇に乗せて、満足げに頷く。

「大丈夫。仕事?」

「違うわ。人に会う約束をしてるの。でも、一時間くらいで帰るから」

「うん」

 私の化粧を終わらせ、髪にゆっくりとブラシを掛け、綺麗にセットしてから、リズは鏡越しでニッコリと笑った。

「可愛い。さすが私の技術だわ」

「そこは私の顔が可愛いっていうべきじゃない?」

「雅の顔も可愛いけど、自画自賛しても足りないくらいに私の技術が素晴らしい」

 実際にこの数日寝てばかりで浮腫みが出ている私の肌を艶やかに見せるのはリズの技術なのは確かだった。最後に綺麗な姿を見せたいと思う気持ちは私の中にもある。

「ありがと。リズ」

「どういたしまして。それと、明日の朝にアパルトマンに帰るから、そのつもりでいてね」

「私も自分の部屋に帰りたいわ」

 
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