君をひたすら傷つけて
ホテルの部屋を出て、ロビーにあるカフェに行くと、一番奥の目立たない席にアルベールの姿があった。スーツを着て、スマートな物腰のアルベールは雑誌の中から抜け出してきたように綺麗だった。
私がカフェの中に入ってくると、アルベールはニッコリと微笑み、そして、私が目の前に座ると少しだけ顔を曇らせた。テーブルには空になったコーヒーカップがあり、時間よりも早く来たようだった。
「何か食べる?」
「ううん。オレンジジュースだけで。アルベールは?」
「俺もコーヒーだけでいいかな」
テーブルにオレンジジュースとコーヒーが届いてもアルベールも私も手を付けることなく。何も話さないままの沈黙が続いていた。自分の気持ちを伝えようと思ってきたけど、実際に目の前にアルベールがいると心に浮かんだ言葉が消えていく。
沈黙の口火を切ったのはアルベールだった。
「南フランスには…一人で行くことにするよ。雅のアパルトマンの方は手を打っているから安心していい」
「え?」
「叔母の仕事の引継ぎが忙しく、まともな生活を送れるとは思えない。事業を引継ぐからには従業員の生活を守らないといけないし、その仕事は……ただのモデルだった男が簡単に背負えるものでもないと思う。ごめん。雅。俺の我儘だ。この前の話はなかったことにして欲しい」
「わかった」
「我儘ついでにもう一ついいか?」
「俺のことを嫌いにならないでほしい」
「嫌いになんてなれないわ」
私につらい言葉を言わせないように優しい我儘を言うアルベールを嫌いになんかなれない。義哉とは違った意味で好きな人だった。優しく私を包んでくれた人だった。
「よかった。俺の我儘を聞いてくれて」
私がカフェの中に入ってくると、アルベールはニッコリと微笑み、そして、私が目の前に座ると少しだけ顔を曇らせた。テーブルには空になったコーヒーカップがあり、時間よりも早く来たようだった。
「何か食べる?」
「ううん。オレンジジュースだけで。アルベールは?」
「俺もコーヒーだけでいいかな」
テーブルにオレンジジュースとコーヒーが届いてもアルベールも私も手を付けることなく。何も話さないままの沈黙が続いていた。自分の気持ちを伝えようと思ってきたけど、実際に目の前にアルベールがいると心に浮かんだ言葉が消えていく。
沈黙の口火を切ったのはアルベールだった。
「南フランスには…一人で行くことにするよ。雅のアパルトマンの方は手を打っているから安心していい」
「え?」
「叔母の仕事の引継ぎが忙しく、まともな生活を送れるとは思えない。事業を引継ぐからには従業員の生活を守らないといけないし、その仕事は……ただのモデルだった男が簡単に背負えるものでもないと思う。ごめん。雅。俺の我儘だ。この前の話はなかったことにして欲しい」
「わかった」
「我儘ついでにもう一ついいか?」
「俺のことを嫌いにならないでほしい」
「嫌いになんてなれないわ」
私につらい言葉を言わせないように優しい我儘を言うアルベールを嫌いになんかなれない。義哉とは違った意味で好きな人だった。優しく私を包んでくれた人だった。
「よかった。俺の我儘を聞いてくれて」