君をひたすら傷つけて

日本帰国

 日本に到着したのは時間通りだった。長いフライトで疲れた身体を動かしながら入国審査を受けていた。今回は本格的な帰国なので数日の間に住民登録などの手続きが待っている。住むためのマンションも決めないといけないし、携帯電話の契約も必要だった。やることはいっぱいだけど、私が一番最初にしないといけないのは、まりえに連絡することだった。

 空港の公衆電話からエマの事務所に電話をすると待ち構えていたのか、すぐにまりえの声が耳元に響いた。

『まりえ。今、空港に着いたわ』

『おかえりなさい。エマは仕事に行っているわ。とりあえず、一度事務所まで来て、それから動こうと思ってる。急だったからいくつかのマンションを探したけど、まだいい物件は見つかってないの。しばらくはエマと一緒に住むか、ウィークリーか、雅が良ければ私のマンションに住んでもいいけど』

 とりあえず一週間くらい住むためのウィークリーマンションが一番いいと思う。エマのマンションは荷物が多すぎて一緒に住める状況ではないし、結婚しているまりえのマンションというのも選択肢にはない。ウィークリーマンション荷物を住み、それから自分で住むマンションを探すのが一番だった。

 私の両親は父の仕事の関係で転勤で名古屋に引っ越しているので一緒に住むことが出来ないから、一人で住むことになる。フランスでもリズとまりえと住んでいたから、一人暮らしは初めてだった。

『もちろん、ウィークリーに住むつもりよ。一晩くらいはホテルに泊まるかもしれないけど』
< 659 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop