君をひたすら傷つけて
 高校の時からの付き合いのあるお兄ちゃんのことを慕ってきたのは間違いない。でも、それは男とか女とかではなく一人の人間としてお兄ちゃんのことを慕っているだけで、エマのいうような男と女の関係ではない。お兄ちゃんも義哉のお兄さんという立場で私と接してきたと思う。

 大事にされたのは……。自分でも感じている。

 それはきっとお兄ちゃんが義哉にしてあげたかったことの真似事を私でしているだけだけど、私も甘えすぎていたかもしれない。日本に帰国して三か月の間、いくつかの仕事をしたけど、どこかで困ったことが起きた。フランスで良しとされていたものが日本でも良しではないのだ。

「大事にはされたけど甘やかされたのかどうか……。とにかく仕事のことはどうにかする。この後、お兄ちゃんに会ってくるから、仕事の話もしてくる。でも期待しないで」

「雅次第でいくらでも仕事は来るでしょ。早く本気になってもらわないと困る。雅レベルのスタイリストを遊ばせておくほどウチの事務所は暇じゃないから」

「わかった。話の流れで仕事の話になったら話してみるから。でも、それが仕事になるかどうか分からないわ」

「流れではなく自分でそっちの方に持っていってよ。ガッツリ仕事を取ってきて」

「難しい」

「難しくない。普通にしていたら、仕事は降ってくるから。大体、雅はリズに育てられたんだからもっと自分に自信を持ってよ」

「わかった。とりあえず、今から会ってくる。だから、今日は直帰よ」

「いいわよ。全然。明日休んでもいいから」

「普通に出社するから大丈夫」
< 667 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop