君をひたすら傷つけて
「高取くんって優しいね」

「そう?普通だよ。でも、本当に母さんのプレゼントでは困っていたからこうして一緒に選んでくれる藤堂さんには感謝だよ」

「そんな期待しないでよ。ハードル上げないで」

「別にハードルを上げるつもりはないよ。もしも、今日、見つからなくてもそれはそれで仕方ないよ。でも、いいものを見つけられたら嬉しいとは思うけど」

「本当にいいものがあるといいけど、大人の人が喜ぶものなんてわかんないよ」


「手帳とかボールペンよりはいいものを見つけてね」

「うーん。本当に悩んじゃうよね」

「大丈夫。大丈夫」

 高取くんはいつもの穏やかな雰囲気を覆い隠すかのように嬉しそうにはしゃいでいた。綺麗な顔には嬉しそうな微笑みがあって、ただ一緒に買い物に行くだけなのに私と同じように『楽しみ』だと思ってくれているのかもしれない。

 さやかの言った『放課後デート』とは違うけど、それでも高取くんとの一緒の時間が楽しみで仕方なかった。

 学校の校門を出てショッピングセンターのある駅の方に二人で並んで歩いていると、同じように周りには疎らだけど生徒が駅に向かっている。この時間なら二人で歩いていても目立つということはなかった。


< 67 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop