君をひたすら傷つけて
 バスルームから出て来ると、テーブルの上には麦茶とアルバムが何冊も置いてあった。本当にお兄ちゃんは部屋にある全部のアルバムを持ってきたのだろう。

「凄い量だね」

「父が写真を撮るのが好きだったんだ」

 一番古い写真は生まれた頃の物だった。少し色褪せたアルバムの中には生まれたばかりの義哉がいて、その横にはとっても嬉しそうなお兄ちゃんの姿がある。お母さんに支えられながら、赤ちゃんの義哉を抱く、お兄ちゃんは少し誇らしげだった。

「この後、しばらくして、義哉に疾患があるのが分かって、それで、そこからは父が写真を撮る量が増えた。詳しくは今でも言わないけど、写真の中に一瞬を切り取りたかったのかもしれない。そして、自分の中の恐怖と戦っていたのかもしれない。自分が大人になって、その思いは分かる。自分の大事なものがそこにあるだけの幸せというのがどういうものか分かるから」

 アルバムの中の義哉は病室での写真と普通の生活の写真とが交差していく。そんなアルバムを見ながら、成長を感じた。そして、私の知っている義哉に近づいていく。愛しさと寂しさが募っていく。声を聞きたいと思う。そっと手に触れ、温もりを感じたいと思う。

「お兄ちゃんもお父さんと同じように感じていたの??怖かったの?」

「ああ。ずっと怖かった。義哉の体調が悪くなり、病院に運ばれ、苦し気に管に繋がれているのを見ながら、怖かったし、苦しかった」
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