君をひたすら傷つけて
 私たちはよく似ている。その似ているところが苦しいのかもしれない。互いに痛みを感じ、痛みを理解する。好きとか嫌いとか…そんな感情ではない。もっと深い場所でまだ言えない傷を抱えている。消せない傷は痛みを誤魔化しているだけかもしれない。

「雅の言うとおりだな。俺は義哉が忘れられる日は来ない。俺はズルい。義哉にしてあげたかったことを海にして、雅にする。身代わりなんだ」

「それでいいと思う。だって、義哉も忘れられたら寂しいだろうし、それに篠崎さんもお兄ちゃんの思いが不要ならハッキリと言ってくる人だと思う。だから、遠慮せずに尽くしていいんじゃない」

 ニューヨークでの二人の姿を見てなかったら分からないかもしれないけど、篠崎さんの中でお兄ちゃんの存在は大きくて、注がれた愛のことも理解しているような気がする。モデルとして成功すること。俳優として成功することの最後のパイはお兄ちゃんが握っている。

 お兄ちゃんが押せば、篠崎さんは誰よりも眩く輝くだろう。でも、私は篠崎さんだけでなく、お兄ちゃんにも幸せになって欲しい。

「お兄ちゃんも幸せになって欲しい」

「今のままで十分に幸せなんだ。仕事があり、海がいて、雅がいる。それだけで十分に幸せなんだ」

「そっか」
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