君をひたすら傷つけて
 エマもリズも整理整頓は苦手なので、まりえの居ない事務所は荒れていく。今日は溜まっていた領収書の整理をしてからゆっくりするつもりだったけど、掃除を先にした方がいいだろう。

 エマもリズも、まりえが妊娠したからと言って、他の事務員を雇うつもりはないようでしばらくはこの生活が続くだろう。もっと、事務所が荒れるかもしれないけど、私も他の事務員なんかいらないと思った。


 掃除が一段落して、自分のためにコーヒーを淹れ始めた時に携帯が鳴り、お兄ちゃんからのメールが届いていた。メールは急いでいたのか、箇条書きだった。

 篠崎さんがお気に入りのセレクトショップの前で待ち合わせ。篠崎さんの彼女と私の二人で衣装を選び、篠崎さんの待つレストランに連れて行く。その後はお兄ちゃんと一緒に篠崎さんの部屋に家具の搬入と買い物した服とかを整理することだった。

 時間は前後する可能性があるから、その都度連絡するとのことだった。メールの文章は短いけど、一日、いや、夕方からの行動としては激務になる。そこまで、篠崎さんを本気にさせた女の子はどんな子なのだろう。

 興味がないと言えば嘘になる。

 あの篠崎海を本気にさせてしまう女の子に私は会った時にどう思うのだろうか。そんなことを思った。

書類を整理していると無造作に重ねてあった紙の一番上にスケジュールがあり、リズのスケジュールの欄に『渡仏』とあった。リズは来月には日本を離れ、フランスのコレクションのスタイリストをすることが決まっていた。

『雅も一緒に行く?』

 そう言ったリズの言葉に私は首を横に振った。今更、フランスで仕事をする勇気はなかった。
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