君をひたすら傷つけて
「篠崎さんはそんなに心配していたの?」

「海はな。本当は自分が東京にいる間に引っ越しをさせたかったらしいけど、一日しか時間がなかったから、仕方ないと思っていたみたいだ。雅を動いてくれたことに本当に感謝してる。これで海も落ち着いて撮影に迎えるだろう。まあ、その前に里桜さんの状況を尋問されるとは思うよ」

「本気なのね」

「多分。そうでないと、あれだけのことはしないだろ」

 里桜ちゃんが住むために必要な全てを用意し、エンゲージリングも二人で選んできた。裸石から選んだというのだから『仮のエンゲージリング』ではない。篠崎さんの本気の証だった。『篠崎くん』と私に呼ばせたのも、里桜ちゃんが怖がって逃げていかないようにするため…。

 本当に好きなのだと思う。


「事務所的にはいいの?」

「ああ。事務所としては演技に深みが出るなら、それでいいらしい。社長は『それで潰れる存在じゃないだろ』って言ってるくらいだし」

 そんな話をしていると、ホテルに着いた。車を駐車した後に、お兄ちゃんは胸元からカードキーを取り出した。

「これが雅の部屋の鍵だよ。悪いけど、自分一人でいいか??
 私は今から撮影現場に戻る。本格的な撮影は明日からだけど、海は撮影場所のチェックをすると言って出かけている。別の付き添いが一緒にいるけど、傍に居ないと私の方が心配だから」

 既にチェックインまで終わらせてある部屋は15階の一室だった。

「もうチェックインしていたのね」

「ああ、その方が安心だから」

「もしも嫌って言ったらどうするつもりだったの?」

「仕事で来ている雅が嫌とは言わないだろ。どんな崩れそうな場所であっても」
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