君をひたすら傷つけて
 確かに嫌ということはない。どんな場所であっても、それは仕事だから。

「わかった。でも、篠崎さんが帰ってきたら、挨拶したいから連絡して。それと監督にもクライアントも紹介して」

「わかってる。海には、現場から戻ってから、監督やクライアントは明日紹介する。撮影が始まったら懇親会もする予定だから」

「ありがと。じゃ、連絡待っているから」

「ああ。色々ありがとな」

「私の方こそ。いつもありがとう」

 車から降り、荷物をトランクから取り出すと、私はお兄ちゃんに手を振ってからロビーに向かった。そこからエレベーターで15階まで登る。カードキーを使って入った部屋はシングルルームでスタイリストが使うには十分すぎる部屋だった。

 荷ほどきをする前に私はエマに電話した。

 京都に着いたことと、ホテルをお兄ちゃんが準備してくれていたことを連絡した。ワンコールで出たエマにホテルのことを伝えると『分かった』とだけ言った。お兄ちゃんが私のホテルを準備したと聞いても驚かないのは、お兄ちゃんのマンションに居候しているからかもしれない。

 事務所に連絡が入った事項については、その都度、まりえから携帯とタブレットにデータを送ることになると言われただけだった。

『監督は拘りがあるだろうし、篠崎海も拘る方だから、時間が超過するかもしれないので、スケジュールは東京に帰ってから入れることにするから、まあ、精一杯頑張って』



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