君をひたすら傷つけて
 私と高取くんは雑貨屋の前で別れてからそんなに時間が経ったわけではないのに、外に向かう通路には高取くんの姿はなかった。周りを見回してもたくさんの楽しそうな笑顔が流れ去って行く。

「あ、すみません。」

 消えたといっても過言ではないくらいに姿を隠してしまった高取くんを見ながら私は歩いていると、全然知らない人が私を身体にぶつかり、身体が何度も揺れた。もうすぐ塾に行かないといけない時間が近づいていた。ぐるっと見回してみても高取くんの姿は見えない。ここに居ても仕方ないと思い、帰ろうと思った時に私を呼ぶ声が聞こえたような気がした。


『雅…。』


 でも、それは空耳だった。辺りを見回しても誰も居ない。そう空耳だったはず…。でも、私の身体は何かに呼び寄せられるように身体が動いた。そして、別の建物に続く通路の一番端のベンチに座る高取くんの姿が目に入る。
高取くんは遠目に見ても酷く疲れた様子で、さっきの微笑みは全くなく顔を苦しそうに歪めていた。

 顔が真っ青という表現はこういう人の事を言うのだと思う。そのくらい高取くんの顔は白かった。


 必死で人の波を抜けて走っていくと私に気付いた高取くんは一瞬悲しそうな顔を浮かべ、またいつものように優しい微笑みを浮かべるのだった。


「何か忘れ物でもした?」

「体調悪いの?顔色悪いよ。」
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