君をひたすら傷つけて
 里桜ちゃんをソファに座らせて私も座ると、フッと息が漏れた。昨日からの怒涛の一日に私は少しだけ緊張していた。お兄ちゃんが私を里桜ちゃんの傍に置いた理由が分かる。少しでも不安を和らげるためだろう。

「今日は高取さんの方が落ち着かないかもしれないわ」

「そうですか?いつものように見えますけど」

「高取さんにとって篠崎くんは特別なのよ。だから、今は心配で仕方ないと思うわ。そろそろ会見の始まる時間ね」

 ディスプレーに電源を入れると、思ったよりも人数は多く。周りには数えきれないくらいのカメラが並んでいる。これからの俳優篠崎海の会見を滞りなくカメラに収めるように準備万端な状況であるのが私にもわかった。

「そんなに心配しないでも大丈夫。篠崎くんは俳優という仕事をしているからフラッシュにも慣れているし、こういう場所にもそんなに緊張しないわ」

「でも、人が多いです」

「そうだけど、あの『篠崎海』が結婚会見をするのだから、これくらいは普通でしょ」

「そうなんですね。でも、緊張してしまって」

「篠崎くんは里桜ちゃんの為に頑張ると思う。だから、里桜ちゃんは何も心配せずに見ているだけでいいと思う」

「私のためですか?」

「そう、里桜ちゃんのため」

 そんな話をしていると、一気にディスプレーの中が騒がしくなった。あまりのフラッシュの激しさに、里桜ちゃんが心配するから口には出来ないけど、『さすが、篠崎さん』って思っていた。逃げ出したくなりそうな状況で、篠崎さんは綺麗な顔で微笑んでいた。

 それにこの会見をどれだけ上手くいくかによって、これからが変わってくるのを、篠崎さんだけでなく、周りの全ての人が分かっていた。
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