君をひたすら傷つけて
 少しコンビニで時間を過ごしてから、篠崎さんのマンションに向かった。二人で車の中でコーヒーを飲みながら、昨日からの疲れの蓄積を感じた。私でこんなだから、お兄ちゃんの疲れはもっと凄いだろう。でも、コーヒーを飲みながら、パソコンを開き、篠崎さんの婚姻届提出の報道がどのくらい出ているかを、一つ一つ確認していった。

 比較的好意的に書かれてあるけど、悪意あるコメントで埋め尽くすような週刊誌には『偽装結婚』の文字が散りばめられてある。二人の気持ちはともかくとして、『偽装結婚』から始まった恋であることは間違いない。

「落ち着いたら、少し休みたい」

「でも、しばらくは無理でしょ。これが終ったら、映画の公開でしょ。映画祭に出品したら、その後も忙しくなると思うけど」

「俺もたまにはゆっくりしたい。それに、雅をどこにも遊びに連れて行ってやってないし」

「遊びに連れて行ってくれるの?」

「ああ。前にパリの郊外で二人でゆっくりしたろ。あれは本当に楽しかった」

 パリで働いている時にお兄ちゃんは会いにきてくれて、二人で色々な場所を楽しんだのを思い出す。本当に楽しい時間であっという間に過ぎてしまった。あれから二人で遊びには行ってない。会うのは仕事の場ばかりだった。篠崎海のマネージャーとスタイリストの関係が続いている。

「そうね。本当に楽しかった。また、どこかに行けたらいいね」

 そんな話をしながら篠崎さんのマンションに行き、連絡をすると、スーツを着込んだ篠崎さんが車に乗ってきた。

「悪いな」

「別に高取が悪いわけじゃない。里桜のこれからのことを考えれば、これがベストな選択だと思う。ただ、俺が一緒に居たかっただけだ」


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