君をひたすら傷つけて
 篠崎さんとお兄ちゃんは控室に来たのはそれからしばらくしてからだった。出演時間まで準備をしたらギリギリの時間だった。質問の内容を確認するには時間が短すぎる。

 こんなに時間が押していると、準備に割ける時間は少しだろう。そんなことを考えながら時計を見ていると、篠崎さんとお兄ちゃんが入ってきた。

「悪い。あまり時間がない」

「分かってる。さっきから考えていたけど、持ってきたスーツよりも婚姻届提出の時ままの方が臨場感があっていいとは思う。でも、靴は磨いているのと履き替えて貰って、後は髪を少し整えるだけでいいかな」

 篠崎さんは頷くと私が出した靴に足を入れた。そして、ハッとした表情を浮かべた。

「いつもより少しだけ横幅が広い靴を選んでいるから、少しは楽でしょ」

「ちょっとだけど、こんなに違うんだね。雅さんありがとう」

「頑張ってください」

「そうだね。頑張るよ。じゃ、高取。行こうか」

「ああ」

 そういって控室を出ていった、お兄ちゃんは一人だけ戻ってきた。

「今日はありがとう。きっと、朝まで掛かるから、タクシーで帰っておいてくれ」

「うん。分かった。篠崎さんの会見を見てから、帰るから。私の心配はしないで大丈夫」

「心配はする。雅に甘えたけど、マンションに送って帰ればよかったと思っているくらいだ。仕事とはいえ、女の子を夜遅くに一人で返すのは気が引ける。心配だから、帰りついたら連絡だけは入れといてくれるか?」
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