君をひたすら傷つけて
 本当に心配症だと思うけど、少しでもお兄ちゃんの負担を無くしたくて、私は頷く。そんな私を見て少し安心したのか、微かに微笑んで、すぐに仕事モードのお兄ちゃんの顔になる。篠崎さんを守るために行く背中を見ながら、私は全てが上手くいくように祈ることしか出来なかった。

『彼女は一般人』

『好きになったのは自分の方』

『彼女といると癒される』

『彼女のことは静かにして置いてくださいね。彼女以外の質問なら全て答えます』

 画面越しに見る篠崎さんの会話の内容を聞きながら、この番組を見た人は誰一人として篠崎さんと里桜ちゃんが偽装結婚から始まったなんて思いもしないだろう。篠崎さんの表情は柔らかで、どこか、里桜ちゃんのことを思い出しているのかと思うほど、不意に綺麗な微笑みを浮かべる。

 出会うべきして出会った二人が幸せになって欲しいと思う。

 私は控室の片付けを終わらせて出ると、テレビ局の玄関からタクシーに乗ってマンションに帰った。もう、日付けが変わってかなりの時間が過ぎていた。真っ暗な外を見ながら、私は篠崎さんと里桜ちゃんの幸せを祈り、お兄ちゃんの無理しすぎないようにと祈った。

 お兄ちゃんがマンションに帰ってきたのは次の日の夜だったと思う。でも、その日、私はエマの手伝いで雑誌の撮影の現場に入っていたので、会えず、私がマンションに戻った時、お兄ちゃんはドラマの撮影出掛けていた。

 私がマンションの部屋で寛いでいる時に、お兄ちゃんが帰ってきた。会うのはあの結婚会見の日以来だった。

「雅。この前まで撮っていた映画をイタリアの映画祭に出品することになったよ。これで海は一段と大きな俳優になることが出来る」



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