君をひたすら傷つけて
 神崎くんのスタジオで写真を印刷し、その写真を持って芸能事務所で働いているお兄ちゃんに手渡すと、お兄ちゃんはフッと息を吐いた。

「ありがと。雅」

「なんか疲れている??」

「海のスケジュール調整が大変で……。週末に休みを取って里桜さんの実家に挨拶に行くから、オフをくれと言われ。今度のイタリアでの映画祭の後にもオフが欲しいらしい。映画の撮影が終わっているから、少しは余裕があるけど、週末となると中々難しい」

「週末って?」

「里桜さんの実家に挨拶らしい」

「映画祭の後は?」

「里桜さんと結婚式をしたいらしい。分からないでもないが、さて、どうやって仕事を移動させるかだな。こんな風に電撃結婚じゃなかったら、もう少しスケジュールも余裕があるが、仕方ないな」

 里桜ちゃんの実家に挨拶に行くというのも、結婚式を挙げるというのもごく一般的なことだけど、今の篠崎さんの状況でそれだけの休みを作り出すのがどれだけ大変か分かる。

「今日も遅いの?」

「ああ、残業だ。テレビ局に挨拶周りにもいかないといけないし……。雅はもう仕事終わりだろ。どこかで何か食べるか??」

「ううん。これ以上仕事が溜まると大変よ。無理しないで」

「ああ。分かっている。雅も気を付けて帰れよ。それとエマさんには映画祭の件の連絡を入れておくから。よろしくな」

「うん。ありがと。私も勉強になるから嬉しい」

 私は芸能事務所の入っているビルを出るとエマの事務所に寄ってから帰ることにした。映画祭に行くことと、スタイリングのことも勝手に決めたけど、私もイタリアに行くならエマに了承して貰わないといけない。

 多分、反対されることはないとは思う。
< 768 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop