君をひたすら傷つけて
 エマの事務所に戻ると、珍しく、エマ、リズ、まりえが揃っていて、美味しそうにコーヒーを飲んでいた。テーブルには私のカップもあり、帰ってきた私を見て、まりえがコーヒーを淹れてくれた。

「遅かったわね。さっき、高取さんから今度のイタリアでの映画祭の件でスタイリングの一切をウチの事務所に頼みたいって。雅が営業なんて凄いじゃない??」

「営業も何も。里桜ちゃんのパスポートの書類の受け取りに言ったのと、神崎くんを連れて行ったからよ。営業じゃなくて買収されたの」

「神崎くんを何で?」

「パスポートの写真撮影」

「え?あの、神崎くんに里桜ちゃんの写真??酔狂ね。でも、いい写真だったでしょ。あの子、中々いいものを持っている」

 エマとリズは何度か、神崎くんと一緒に仕事をしたこともあるし、私もある。口は悪いけど、カメラの腕は確かで、撮るものに命を吹き込むかのようにいいものを撮る。いくつかの賞を取ったこともある新進気鋭のカメラマンにパスポートの証明写真を撮らせたのだから、篠崎さんもだし、それを止めなかった高取さんも凄い。

「で、雅。イタリアの映画祭に行くの?」

「行ってもいい?出来ればリズにも来て欲しい。私一人じゃ不安だし」

「雅はいいと思うけど、私はイタリアには行けないわ。フランスでコレクションがあるの。エマは?」

「雅とリズが居ないのに日本を開けるわけにはいかないでしょ。それと、まりえのこともあるし」

「まりえのこと??」

「まりえは妊娠したの。だから、もう少ししたら、産休に入るから」
< 769 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop