君をひたすら傷つけて
 デザイナーがデザイン画を起こして、いくつもの作業を繰り返してドレスは出来上がる。里桜ちゃんは仕事をしながらだから、きっと、都内でないと身動きは出来ないだろう。それにシルクの生地もレースもオーガンジーも専門なら心配はないだろう。

「ドレスなら、雅は阿部雅人と知り合いでしょ。この間、スタジオで話していたでしょ。彼は雅が頼めば、篠崎さんの思い通りにドレスを作ってくれるんじゃない??」

「そうかな?」

「篠崎さんがいいと言ったら、阿部雅人に頼めばいいでしょ。ダメならまた別のデザイナーを探すしかないでしょ。頼むにしろ、頼まないにしろ、急がないと」

「わかった。高取さんに連絡してみる」


 お兄ちゃんに連絡して、里桜ちゃんのドレスのデザイナーが阿部くんでよければ、阿部くんに連絡しようと思った。携帯を取り出し、お兄ちゃんに電話を掛けると、待っていてくれたのか、すぐに電話に出てくれた。

『雅。悪いな』

『それはいいけど、私の大学の同級生にデザイナーの阿部雅人がいるの。彼のこと知っている?』

『いや。知らない。でも、雅が見て、いいデザイナーなら依頼して貰えないか??』

『篠崎さんに聞かなくていいの??』

『ああ。海も雅に一任するらしい』

 一任するって言われ、私は責任重大だと思った。でも、期間がこれだけ短いとなると、知り合いの方が融通が利くとは思う。

『とりあえず、阿部くんに聞いてみて、また連絡する』

『本当に助かる。ありがとう』
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