君をひたすら傷つけて
 お兄ちゃんは悪くないと思う。ただ、篠崎さんの光が強すぎて、お兄ちゃんが霞むことは否めない。お兄ちゃんは見た目もいいけど、中身はもっといい。優しいし、頭もいいし、身長だって高いし、仕事も敏腕と言われている。普通に女性から囲まれても可笑しくない男性だと思う。

 でも、女性の影はない。

「私が居候しているから、彼女が作れないとか?」

 あの事件があって、お兄ちゃんの部屋に居候しだして、時間も過ぎている。でも、篠崎さん関係の仕事をすると、一緒に終わることが多く、そのまま一緒に帰ってくることも多いので、都合はいい。マンションは居心地がよくて、転居を考えてはいるけど、踏み出せなかった。でも、お兄ちゃんに幸せになって貰いたいと思う気持ちはある。

「そんなことない。雅が一緒に住む前から、特別な女性はいないよ。こんな仕事をしていると、時間も不規則だから、出会う機会もない」

「出会いはいくらでもあるでしょ。女優だって、歌手だって……。それに、仕事の関係の企業の人もいっぱいいるし」

 篠崎さんのことを話しながら、何人かの女性がお兄ちゃんに熱い視線を送っているのを見たことはある。勘のいいお兄ちゃんがそれに気付かないわけはない。気付いていても、気付かないふりをしているだけ……。

「興味がないからかな。今は仕事が充実している。とりあえず、今度の映画の件もあるし、しばらくは忙しいな。さ、そろそろ帰るか。明日もあるし」

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