君をひたすら傷つけて
 エマの事務所で仕事を終わらせてから、雅人のアトリエに行くと、すでにお兄ちゃんと篠崎さんは到着していて、時間より少し早く着いたにもかかわらず、私が一番最後だった。雅人が篠崎さんのことを思って、アトリエ自体は営業を終わらせてくれていた。

「遅くなってしまって申し訳ありません」

「いや、二人も今、来たところだよ。雅、紹介してくれる??」

「こちらが篠崎海さんとそのマネージャーの高取さんです。そして、こちらが私の大学で同じサークルだった。阿部雅人さんです」

「初めまして、篠崎海斗と申します。今日は俳優ではなく、一人の人間として参りました。先日、雅さんから阿部さんのことを伺い、自分でも阿部さんの作品を見させていただきました。繊細な中にハッとするような可愛らしさもあって、是非とも妻のドレスをお願いしたいと思ってます」

「こちらこそ初めまして。デザイナーの阿部雅人です。よろしくお願いします。では、そちらのソファにお掛けになってください。コーヒーでいいでしょうか?」

「お構いなく」

「コーヒーしかありませんから、雅もコーヒーでいい??」

「ありがとう。でも、里桜ちゃんが来たらすぐに作業に入るから、準備をしていい??それはそうと、雅人はこの仕事を受けてくれるの??」

「二人が揃ってからだよ。ただ、受けた時のことは試着している間に話すから、そんなに焦らないでいい。ただ、時間的に結構厳しいから、受けたとしても、時間が作れるかどうかだよ。ドレスにはデザインだけでなく、パターンを引いてから、それから、仮縫いもあるだろ。そんなに簡単に受けられるものではない」
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