君をひたすら傷つけて
「里桜ちゃん。さ、少しだけ化粧をなおしましょ」

「はい」

 ドレス用の化粧は普段着に着替えると濃すぎるから、化粧を軽く落として、いつも使うような色合いに仕上げてから焼肉に行った方がいい。焼肉に行けば、熱いし、汗もかくだろうから化粧も気にしないでいいとは思ったけど、篠崎さんの前に綺麗な姿にしてあげたいと思った。

「雅さん。色々ありがとうございました。最初から最後までお世話になってしまって」

「いいのよ。私が好きでしていることだから。さ、本当に急がないと神崎くんに怒られるわ。もう、そんなに時間がないと思うの」

「時間??」

「高取さんは里桜ちゃんが着替えを終わらせて、車で移動も考えてから予約をしていると思うわ。だから、急がないと」

「はい」

 里桜ちゃんの着替えが終ってから、カーテンを開けると、神崎くんはカメラの画面を見ながら、篠崎さんと話していて、その横で雅人はチラチラ見ながら、手を動かしている。もうデザインを起こし始めているようだった。

「雅。焼肉の部屋は取っているから。少し急ごうか」

 私の想像通りにお兄ちゃんは予約まで終わらせてくれていた。

「阿部さんもよかったら、一緒にどうですか?」

 雅人はニッコリと微笑み首を振った。

「今のイメージを忘れないうちに何枚かスケッチをしたいので、遠慮します。すみませんが、先ほどの最後のドレスの写真が出来上がったら、早めに届けてくださると助かります」

「わかりました。印刷が終り次第お届けします。今日は本当に無理を言いました。ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとうございます。ドレスの件は任せてください。久しぶりに仕事がしたくてたまりませんから」
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