君をひたすら傷つけて
 里桜ちゃんの涙にハンカチを当てると、静かに布に吸い込まれていく。そんな姿を見ていた篠崎さんは里桜ちゃんの手を優しく握った。

「家に帰ったら一緒にどこに行くか決めような」

 その優しい声に、もっと里桜ちゃんは涙をこぼしながら笑った。里桜ちゃんは泣いているのに本当に可愛いと思った。篠崎さんの言葉に里桜ちゃんが頷いているのを見ると、肉を頬張っていた神崎くんはクスクス笑いながら、ビールを飲み。お兄ちゃんは私の方を見つめ、ニッコリと微笑んだ。二人の幸せそうな姿を見ていると心の奥が温かくなる。

 幸せを見守りたいと思った。

 里桜ちゃんが泣き止んでから、また五人で一緒に焼肉を楽しんだ。里桜ちゃんのお皿に篠崎くんが甲斐甲斐しくお肉を焼いては、運んでいる。

「美味しいけど、ラブラブに当てられそう」

 そんなことを神崎くんはボソッと口にする。

「新婚さんだし」

「ま、仕方ないっすね」

 お肉も全部なくなり、運んでこられたお茶を飲んでいると、何を思ったのか、急に神崎くんが立ち上がった。

「ごちそうさまでした。ちょっとコンビニに行ってもいいですか?」

「大丈夫??一緒に行こうか?」

 そう言ったのは神崎くんで、ビールも一杯飲んだから大丈夫かと思って、私が言うと、すぐに断られた。

「いや。すぐに戻ります。ちょっと待っていてください」

 そういって、あっさりと部屋を出ていった。篠崎さんとお兄ちゃんは何があったのかも気にしてないようだった。

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