君をひたすら傷つけて
「少しは疲れたけど、二人が幸せそうな姿が見れて良かったと思ってる」

「雅はこれからどうする??」

 お兄ちゃんの運転する車でマンションに向かって帰っていると、さっきまで静かだったお兄ちゃんが急に話しかけたきた。急にどうすると言われても……。

「マンションに帰ったら、シャワーを浴びて寝ようとは思うけど」

「そういう意味ではなくて、もう、恋愛はしないのか」

 義哉が亡くなってもう、かなりの時間が過ぎている。アルベールと別れて、一年以上経っている。篠崎さんと里桜ちゃんと見ていると幸せそうで羨ましいと思うこともあるけど、だからと言って自分が恋愛をしたいかと言えば、それは疑問だった。

「今は仕事が楽しいから恋愛は考えてないわ」

 これは嘘ではない私の本音だった。

 日本に戻ってきて、エマと一緒に仕事を始めてから、本当に毎日忙しく楽しい時間を過ごしている。今は仕事を頑張りたいと思う気持ちに嘘はない。

「俺が海のスタイリストを頼まなかったら、今頃、アルベール・シュヴァリエと結婚して幸せになっていたのかもしれないとか考えた。里桜さんのドレスを見て、雅も幸せになって欲しいと思ったよ。アルベール・シュヴァリエは反対する理由のない男だった。本人も性格も容姿も家柄も……。だから、雅には申し訳ないと思っている」

「お兄ちゃんのせいじゃないわ。私が自分で選んだ道だから」

 私とアルベールはタイミングが合わなかった。でも、本当はそれだけではないと今では分かる。篠崎くんと里桜ちゃんを見ていると、私とアルベールは違う。好きだったけど、愛してなかった。本当に好きで愛していたら、私は仕事を終わらせて日本に戻った時に、生活も仕事も捨ててアルベールの元に行っただろう。

 でも、それが出来なかったのが、全てだった。
 全てを捨てられなかった。
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