君をひたすら傷つけて
 篠崎さんの結婚式のことは出来るだけ力になりたいと思う。でも、フランスなら兎も角、イタリアでどれだけのことが出来るだろう。リズがいてくれたらそれだけで安心するのに、リズはディーのコレクションでフランスに行くから、フィレンツェでの結婚式は私しかいない。

 篠崎さんのスタイリストだし、里桜ちゃんのことは大好きだから、お手伝いが出来ることは本当に嬉しい。でも、日本ではないイタリアで自分がどれだけできるか分からない。

 そんなことを思いながら、私は里桜ちゃんの結婚式のことを思っていた。幸せそうな篠崎さんと里桜ちゃんを見ていると心の底が温かくなる。その反面、私にはない未来だと思うと、羨ましい。今の私は幸せだと思う。

 でも、恋愛とか結婚とか……。考えられない。


 雅人から連絡あったのは、里桜ちゃんの試着に行ってから数日後のことだった。私は自分の仕事が終わるとすぐに雅人のアトリエに向かった。雅のスタイリストとしての意見が聞きたいと言われたからで、私は自分でいいのかと迷いながらも雅人のアトリエに行くことにした。

 雅人のアトリエは既に閉められてあり、中に電気は付いているものの、ドアには『クローズ』札が掛けられていた。ドアを押すと、鍵は掛かってなく、ドアが開いて音が鳴ったからか、奥から雅人が出てきた。

「雅。呼び出してごめんな。篠崎さんと里桜さんのドレスのラフが出来て、自分の中でこれがいいと思ったけど、実際にどうかと意見を聞きたくて……」
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