君をひたすら傷つけて
 奥のアトリエにある雅人専用の部屋に入ると、テーブルの上にもホワイトボードにもたくさんのドレスのデザイン画があった。どれだけの時間が掛けたのか分からないくらいの量に驚く。傍に置かれてある篠崎くんと里桜ちゃんの写真を見ながら書いたのだろう。

「これ全部あれから書いたの?凄い」

「里桜さんが一人の時と、篠崎さんと二人で並んだ時のイメージが違い過ぎて、正直、どうしたらいいのか迷っている。一人ならシンプルなラインを引き立たせたものをって思うけど、篠崎さんの前ではとっても可愛らしい女性だから、可愛いのがいいのかなって」

 並べられたデザイン画を見て、さすが人気のあるデザイナーなだけあって、ドレスのラインが洗練されていると思った。何枚も掛かれたデザインを見るとそれだけで雅人が必死に里桜ちゃんのドレスに向かっていることもわかった。

「そんなに違う?」

「ああ。一人の時はなんというか、しっかり者のお嬢さんという感じなのに、篠崎さんと並ぶと、心のどこかで彼に大事な部分を委ねているように見えるんだ。確かに篠崎さんは実際に見て華やかな人だし、雰囲気は抜群にいい。でも、テレビや映画で見るのとは違う。本当に優しい人だし、度量が広い」

「確かにそうかも。でも、写真でそこまで分かるのね」

「伊達に一番幸せな時間を過ごしているカップルを見ているわけじゃないよ。結婚式の準備の時期って女性だけで来店したりするのに、篠崎さんは忙しいはずなのに、自分で来店した。それに、あのマネージャーに俺の連絡先を聞いて、自分で電話を掛けてきた。正直、最初は悪戯かと思った。だって、人気実力派俳優で、つい最近テレビを賑わしたのに、自分で電話してくるとか思わないだろ。メールなら兎も角」
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