君をひたすら傷つけて
「よかった。じゃ、俺はもう少し仕事をしていく。呼び出した上に送れなくて悪いな」

「そんなの気にしないでいいわよ」

 静かにアトリエのドアを閉めてから、窓越しに見える雅人は真剣そのもので、そう時間が掛からないうちに、仕上げるだろうと思った。


 そして数日後、雅人の事務所に呼ばれた篠崎さんと里桜ちゃんは雅人の渾身のデザインを気に入り、里桜ちゃんのドレスが雅人の手によって作られることになった。凝ったデザインだけど、使っている素材は身体に負担を掛けないから、イタリアで結婚式を挙げる里桜ちゃんにはいいと思う。花が咲いたような華やかでいて、可愛らしいドレスは里桜ちゃんに似合うだろう。ただ、出来上がるまでに時間は相当掛かりそうだった。

 そして、現状運転に戻れるはずの私はエマの事務所で日々仕事の忙しさを増していた。理由は動けるスタイリストがエマと私だけになったことだった。リズはディーのコレクションに参加するために、フランスに戻り、細々としたことをしてくれていた、まりえが妊娠の為に出来る仕事が限られたことだった。

 エマは仕事は出来るが、整理整頓はどちらかというと苦手で、私も自分のことで手一杯でエマの事まで出来なった。

「新しい事務員を雇ったらどう?私に気を遣う必要ないし。実際に出産後も戻れる保証はないし」

 そう言ったのは、まりえだった。

「他の人を雇うつもりはない。だから、まりえは産休育休をきちんと取得して、子どもの用事は最優先にしていい。だから、必ず復帰して。まりえの代わりは必要ない。それが代表の私の意見よ。ただ、まりえの身体最優先は命令よ」
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