君をひたすら傷つけて
『雅。どうした。何かあったか?』

 数コールのうちに聞こえたのはお兄ちゃんの声だった。お兄ちゃんの声を聞くと安心する私がいた。里桜ちゃんがミラノに行きたいという希望は叶うと思った。映画祭の会場は広いし、関係者以外は会場内に入ることが出来ない。ミラノまで行って、会場に入れなかったら意味がない。でも、お兄ちゃんならどうにかしてくれる。

『里桜ちゃんがミラノに行くの。空港まで迎えが欲しいけどどうにかなる?』

『今から?一人で??』

『テレビで映画祭のレッドカーペットを見ていて、とっても行きたそうだったから、チケットを用意したの。もしも空港までの迎えが来れそうだったら、お願い。でも、無理だったら、私がミラノ映画祭の会場まで送る』

『里桜さんのご両親は?』

『里桜ちゃんをミラノ映画祭の会場に送ったら、その足でローマに戻るから大丈夫。でも、会場に入れないと意味がないから』

『わかった。必ず空港に迎えを行かせるから。雅は予定通りにローマで里桜さんの両親を頼む』

『ありがとう。お兄ちゃん』

『それはこっちのセリフだよ。雅。ありがとう』

 お兄ちゃんと連絡が取れ、私は私も空港まで行くために準備を始めた。外のレストランの予約を取消し、ホテルでの二人分のディナー予約をした。ホテルの中なら、里桜ちゃんのご両親の二人でも大丈夫だろう。

 そして、バタバタと準備をしていると里桜ちゃんが部屋に戻ってきた。

「ご両親は何て?」

「行ってきていいって」

「よかったわ。ミラノの空港に高取さんが迎えに誰かを来させるって言ってくれたから大丈夫よ。ローマの空港の搭乗口までは私が送るわ。里桜ちゃんのご両親の食事はホテルのレストランでのディナーを予約しているから、そこを利用して貰いましょ」
< 834 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop