君をひたすら傷つけて
「なんでリズが?」

「海と里桜とミラノで会って、結婚式に出席することになったの。で、ついでに雅を手伝おうかと思って。ドレス着せて、メイクとかなると一人よりも二人がいいでしょ」

 持ってきたメイクボックスを私の方に見せた。そのメイクボックスを見て、私は心底ほっとした。リズがいてくれるだけでこんなにも気持ちが楽になる。肩の力がフッと抜け、私は自分が思っていたよりも肩に力が入っていたのだと思った。

「ありがとう。リズ。嬉しいわ」

「さ、海と里桜はもうすぐ到着すると思うから、少し急ぎましょ」
 
 二人で準備をしながら、一緒にパリで仕事をしていた頃のことを思いだす。あの頃、リズのアシスタントとしての自分が不甲斐なく思い、必死で努力したのを思い出す。

「ねぇ。リズ。里桜ちゃんを空港に送った時にアルベールに会ったの。仕事で移動中だった」

「そう。でも、アルベール・シュヴァリエの会社は南仏だから、ローマに居ても可笑しくないわね。で、二人で何か話したの?」

「一緒に食事をして、日本での生活のことを聞かれて、高取さんのマンションに一緒に住んでいることを言ったの」

「残酷ね。嫌いで別れたわけではない男にそんなことを言うなんて。エマの事務所を手伝いだしてからも、フランスやイタリアで仕事をしている時にアルベールに会うことがあったわ。彼、雅のことを心配してた」

 リズの仕事は政財界ともつながっているから、パーティ会場ですれ違うこともあるだろう。でも、そんな話聞いてなかった。リズは何も言わなかった。

「残酷というか、大家さんとその部屋を借りている人ってだけの関係って言ったわ」

「で、アルベールは何て?」
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