君をひたすら傷つけて
「到着したみたいね。私もブラシを並べてからすぐに行くから、雅は先に迎えに行って」

「わかった」

 私は控室を出て、玄関の方に行くとちょうどタクシーから降りる里桜ちゃんに篠崎さんが手を貸しているところだった。助手席からはお兄ちゃんが降りてきて、私の姿を見つけると軽く手を上げ、穏やかに微笑んでいた。

「さっき、表で車の止まる音がしたから、里桜ちゃんが到着したかと思って出てきたの」

「お待たせしました。雅さんのお陰でミラノで楽しい時間を過ごすことが出来ました」

 そういった里桜ちゃんは幸せの光に包まれているように見えた。篠崎さんの横で幸せそうに微笑みを浮かべる里桜ちゃんは可愛いだけでなく、とっても綺麗だった。

「それはよかったわ。ご両親に元気な顔を見せてあげて。二人とも平静を装っていたけど、心配されたと思うし」

「父と母はどこにいますか?」

「そろそろ戻られると思うわ」

「出掛けているのですか?」

「街を歩いてくると言われていたけど、そろそろ戻ると思う。先に、控室に案内するわ」

 教会の中に入ると静寂に包まれた中、微かに声が聞こえた。親族控室に使う部屋の方から聞こえてくるから、私が里桜ちゃんを迎えに出た間に戻ったのかもしれない。

「ここよ。里桜ちゃんはご両親を安心させてあげて。私は先に打ち合わせをしてくる。結婚式の後のこともあるし。打ち合わせが終わったら、迎えに行くからメイクとか始めるわね」

「色々とありがとうございます」

「いいのよ。素敵な結婚式になりそうね。おめでとう。里桜ちゃん」

「ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」

「任せておいて」
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