君をひたすら傷つけて
「私に?」

「ああ。今日の結婚式で着てくれると嬉しい。雅に似合うと思う」

 今日の結婚式はネイビーのワンピースを着るつもりだった。柔らかい素材で出来たシンプルなAラインワンピースだからネックレスなどで、誤魔化せば色々な場所で使える。事務所の用事でパーティや食事会の時によく着ているもので、里桜ちゃんの準備が終わったら、サッと着て、式場に入るつもりだった。

 お兄ちゃんがわざわざプレゼントしてくれるとは思わなかった。

「ありがとう。今日の結婚式に着る」

「気に入るといいけどな。じゃ、俺は海の控室にいるから」

「うん。じゃ、また後で」

 私は時間がないので、紙袋を受け取ると、里桜ちゃんの控室に急いだ。紙袋の中を見たかったけどそれは里桜ちゃんの準備が出来るまでの我慢だと自分に言い聞かせた。

「雅」

 里桜ちゃんの控室に入ろうとすると、後ろから呼ばれて振り向くと、大きな仕事用のボックスを持ったリズが立っていた。

「来てくれて嬉しい。里桜ちゃんのドレスとヘアメイクを一人でする自信がなかったの」

「雅なら一人でも大丈夫だけど、手伝えるのは嬉しいわ。普通の結婚式のメイクなんてしたことないから、派手にし過ぎないようしないといけないわね」

 それは私もリズと同じことを思っていた。ウエディングドレスを着せたことは多々ある。でも、それはオートクチュールでの最後を飾る時で、そのヘアメイクは派手で、ゴージャスなものばかり。でも、今回は違うからそれは加減が難しい。
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