君をひたすら傷つけて
 肌にそっと手を添えると、いつもとは違って少しだけ肌の水分が失われてあるように感じた。ミラノからフィレンツェに来る飛行機の中でも乾燥しただろうし、それでなくても疲れは出てるだろう。

「下地を塗る前にマッサージをしようと思うけど、リズにネイルは頼める?」

「分かった。ネイルは好きにしていいの?」

「ドレスに合うなら清楚な感じがいいわ」

「わかった」

 リズは里桜ちゃんの手を取ると、甘皮の手入れから始め、ベースコートを塗った。そして、そのベースコートが乾く間に里桜ちゃんの髪を纏めていく。その間に私は少し多めに美容液を里桜ちゃんの肌に馴染ませた。本格的なマッサージは出来ないけどゆっくりと疲れがとれるようにとマッサージをしていくと、その分肌が綺麗になっていく。

 リズの方は里桜ちゃんと私に鏡越しで微笑んでから、ゆっくりと丁寧に髪に櫛を通した。そして、ヘアアイロンを使い、器用に巻いていく。それを綺麗にピンで止めていった。そしてある程度セットを終わらせてから、今度は爪に艶のあるピンクのマニュキュアを塗りだした。

「時間がもう少しあればもっと凝ったネイルが出来るのに。3Ⅾネイルはだめ?里桜ちゃんの爪。とっても可愛いからもっと可愛くしてあげたいの」

「ダメ。リズが凝りだすととんでもないものが出来るでしょ。シンプルなジェルくらいにして、手が綺麗に見えるようにして」

 すると、里桜ちゃんはリズの方を見つめ、ニッコリと微笑んだ。

「リズさんのお気持ちだけで嬉しいです。本当にありがとうございます」

「いいのよ。私がしたくてしているから」

 リズがネイルを塗り重ねていくと、凝ったネイルではない、シンプルなネイルなのに手が綺麗に見えた。こういうシンプルなネイルだからこそ、技術が良くわかる。

「我ながらよく出来た」

 リズは満足げだった。
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