君をひたすら傷つけて
 冷たさが喉を通ると、しばらくして胸の辺りがほんのりと熱くなっていく。そして、苦しい思いも少しだけ楽になった。里桜ちゃんの幸せそうな姿を見ていると心から嬉しい。でも、それと同じくらいに胸の奥が痛みを感じる。

 今日はどうしたのだろう。自分の気持ちを制御できない。

 義哉に会いたい。

 篠崎さんと里桜ちゃんの姿は私が描いた夢そのものだったからだった。おめでとうと思い、私も幸せになれる日が来るのだろうかと思った。アルベールとやり直せば、今の篠崎さんと里桜ちゃんのように幸せになれたかもしれない。

 アルベールなら篠崎さんに負けないくらいに私を大事にしてくれるだろう。でも、何かが違う。何が違うか分からないけど、違う。

「雅」

 グラスを持ったお兄ちゃんは一仕事を終えて戻ってきた。手にあるグラスは一口くらいしか飲んでないくらいに減ってない。まだ、色々と心配りをしているのだろう。

「お兄ちゃん。お疲れ様。凄く素敵なレストランね」

「そうだな。名前しか知らなかったけど、実際に来てみて、雰囲気の良さに驚いたよ。教会もそうだけど、フィレンツェの建物はどれもこれも美しい。料理も美味しいらしいよ。インターネットの検索情報だけど」

「料理は今、リズが取りに行ってくれている」

「そうか」

 お兄ちゃんはリズのグラスの置いてある隣の席に座ると、私の顔をそっと覗きこんできた。

「目が赤いな。泣いたのか?」
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