君をひたすら傷つけて
「それはいいけど。お兄ちゃんはシャワーは?」

「まだ、浴びてない。でも、後からでもいいよ。先に雅と食事したい」

「じゃ、そうしましょ」

 お兄ちゃんはスーツの上着とネクタイを外し、胸元のボタンを一つ外すと、ふっと息を吐いた。ソファに座ると身体を預けるようにゆっくりと座った。

「疲れてる?」

「少しな。でも、ワインを飲みたくて」

 そういうと、お兄ちゃんは私の目の前にあるグラスにワインを注ぎ、自分のグラスにもワインを注いだ。ロゼワインのピンクが可愛い。お兄ちゃんはワインなら赤が多いし、ロゼを頼むとは思わなかった。

「珍しいね。ロゼなんて」

「そうだな。肉や魚じゃないから、久しぶりにロゼもいいかなって思った。さ、飲もうか」

 冷たく冷やされたワインが喉の奥にゆっくりと流れていく。アルコールがほんのりと胸の奥を温かくしてくれた。ホテルだけあって、チーズもハムも綺麗に並べてあり、それと一緒にワインを楽しんだ。

 お兄ちゃんは何も言わず、黙々とワインを飲み、食事をしていた。静かに二人で飲むワインは美味しく、あっという間にボトルが空になり、お兄ちゃんはもう一本ボトルを頼んだ。

「どうしたの。お兄ちゃん。いつも以上に何も話さないけど……。何かあった??」

「悪い。気を遣わせたか?」

「そんなに気を遣うってことはないけど、どうしたのかなっては思う」

「聞くか聞くまいか迷ってた。雅……。今日の雅はいつもの雅らしくない。なんというか、いつもと違う気がして」

 
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