君をひたすら傷つけて
 いつもは泣かない私が結婚式の時に泣いてしまったことを言っているのだろう。里桜ちゃんと篠崎さんの結婚式の時は胸が詰まって泣いてしまった。義哉のことを思いだし、私は胸が苦しくなった。でも、その事をお兄ちゃんに言うつもりはなかった。

 今までどれだけ私のことでお兄ちゃんに甘えてきただろう。もう、これ以上は……。

「里桜ちゃんと篠崎さんは色々あったから、本当に良かったと思ったら、涙が出ちゃって。感動しただけよ」

「それならいいけど」

 そういうとお兄ちゃんはワインをグッと煽ると、ボトルから並々注ぎ、また、ワインを飲みほした。

「そんな飲み方したら、酔いが回るよ」

「そうだな」

「そういえば、橘さんの子ども初めて見たけど、叶くん。すごく橘さんに似てるのね。遺伝子って本当に凄いのね。とっても可愛いし、先が楽しみね」

「叶はそうだな。聖の悪い部分を取り除いた感じだな」

「悪い部分って?」

「無鉄砲なところ。妙に自信家なところ。奥さんが大事に育てたんだろうなって思った」

「その無鉄砲で自信家なところが彼の持ち味で、良さであるとお兄ちゃんは思っているんでしょ」

「そうだな。そうでないとあんな映像は撮れない。
 聖が大学生の時に撮った海の映像を見た時にドキッとした。橘聖と一緒に海がモデルをしていることは知っていた。俳優にしたいと社長が言いだして、そのマネージャーを頼まれた時、正直、大学生モデルのマネージャーなんかごめんだと思った。でも、あの映像を見て、心が変わった。この原石が磨かれていくのを傍で見たいと思った」
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