君をひたすら傷つけて
 お兄ちゃんが目を覚ましたのは、そろそろみんなが朝食のためにレストランに集まるくらいの時間だった。自分の部屋に戻って、シャワーを浴びたらギリギリになるだろう。

 ホテルの部屋は朝の光で明るくなっていて、昨日は隠してくれた私の表情も

 そっと身体を起こしたお兄ちゃんは眠っているふりをしている私の身体を上から抱き寄せると、シーツを私の身体に掛け、自分は静かにベッドから降りた。そして、着替えをする音が聞こえ、静かに私の耳元に囁く。

「雅。食事はどうする?レストランに行くなら、そろそろ起きないと」

「……要らない」

「わかった。じゃ、何か軽く食べれるようなものを買ってくるよ」

「それもいい」

「わかった。何か必要なものがあったら、電話してくれ」

「うん」

 お兄ちゃんはもう一度ベッドの所にくると、私の髪をそっと掻き上げ、額に唇を落とす。その優しい仕草に胸の奥が痛くなる。アルコールの抜けた身体には毒になるほどの甘さだった。お兄ちゃんは部屋を出ていくと、私は自分の身体を起こした。

 身体は怠かったけど、とりあえずシャワーを浴びようと思った。朝食はともかく、今日は日本に帰らないといけない。里桜ちゃんのご両親のこともある。

 ベッドから降りると、自分の身体が思うように動かないことに気付いた。服を羽織ることさえ面倒だと思ってしまうくらいの不自由さに私はそのままの姿でバスルームに入った。そして、頭から少し熱めのお湯を浴びると、涙が零れた。
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