君をひたすら傷つけて
 この子は年齢よりも随分大人びた事を言うと思った。確か、橘さんがこの子の存在を知ったのはここ数年だったと聞いている。それまでの間、きっとこの子は母親と二人で過ごしてきたのだろう。積み重ねられた時間がこの子を大人にしてしまったのだろうか。

 そんなことを考えた。

「そんなことないよって言っても、きっと気にするよね。私には子どもはいないの。だから、正直、子どもの扱いには慣れてない。でも、叶くんと一緒にいるのは面倒だとは思わないわ。私の方こそ、面白い話は出来ないけど、ごめんね。
 それと、私はフランスに住んでいたし、仕事でイタリアに来ることもあったから、観光をそんなにしたいとは思わないの。だから、気にしないでいいわよ」

「ありがとうございます」

 そういうと、叶くんは私の横に座ると、必死に撮影している橘さんを見ていた。真剣な視線で父親である橘さんを見つめている。

「お父さんのこと。好きなんだね」

「はい。初めて会った時から大好きです」

「ずっと一緒に住んでなかったと聞いたけど」

「はい。それでも、好きです。僕のお父さんは最高に優しくて格好いいです」

 そういってニッコリと笑う叶くんを見て、私も笑っていた。なんだろ、こんな子どもなのに、人の気持ちを癒すような雰囲気がある。面倒をみるのではない、私は叶くんの存在に癒されているような温かい気持ちになっていた。

「叶くん。少しだけ観光しようか」

「いいのですか?」

「うん。お父さんを見ているだけじゃ、勿体ないでしょ。私、イタリア語を話せるから一緒に行こう」
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