君をひたすら傷つけて
 くるりと街を少し歩いて戻ると、橘さんはまだ写真を撮っていて、里桜ちゃんのご両親は近くに店で買い物をしていた。そして、お兄ちゃんは携帯を見て、眉間に皺を寄せていた。

「どうかしたの?」

「社長から連絡があった。どうも、今からヴェネツィアに映画祭のマスコミが動きそうらしい。海と里桜さんの新婚旅行先を変更した方がいい。二人はまだホテルからでて、そろそろフィレンツェの街を観光していると思う。雅。申し訳ないが、里桜さんのご両親と一緒に先に日本に帰って貰えるか?俺は海と里桜さんがフランスに行くように手続きを終わらせてから、日本に帰る」

「フランス?」

「ああ。もう、イタリアのどこであってもマスコミがいるだろう。それなら、国境を越えてフランスに行く方がいい。たった一日しかない新婚旅行を取りやめさせることは忍びない」

 結婚式も結婚パーティも映画祭のついでに行ったようなもので、新婚旅行はたった一日と聞いている。そのたった一日を邪魔されたくはないだろう。それに切り上げて、日本に帰るなんて……。

「わかった。後のことは気にしないで。日本まで私がきちんと送り届けるから」

「ありがとう。雅が居てくれたからこんなことが出来る。じゃ、先に空港に行こう手続きがある」

「二人に連絡しないでいいの?」

「まだ二人でフィレンツェの街を観光を始めたばかりだと思う。せめて、もう少しだけ何も心配させずに楽しませたい。どうせ、ローマの空港で飛行機のチケットを準備しないといけないから、それから連絡しても遅くない。ヴェネツィアまで電車で移動する予定だったから、それをローマに変えて貰って、空港でチケットを渡す」

 
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