君をひたすら傷つけて
『ありがとう。助かる……』

 そんな言葉の後に連なったのは、昨日私が帰ってから決まったと思われる篠崎さんのスケジュールで、想像以上に多かった。ほとんどがテレビの取材で、色々なテレビ局の番組を渡り歩くことになりそうだった。

 スケジュールを見る限り、マンションに帰れるとは思えない。

 新婚旅行から帰ってきて、新婦である里桜ちゃんを放置したくな気持ちは分かる。婚姻届けを提出して時も、今回も仕方ないこととはいえ、どうにかしてあげたいと思ってしまう。

 篠崎さんが帰ってくるとなると、空港はマスコミで一杯になる。普通に戻ってくるだけでも追われるのに、今回は映画祭での受賞というおまけもついてくる。里桜ちゃんのことはマスコミに追われないように手を打っているとはいえ、何があるか分からない。出来ることはしてあげたいと思った。

 そして、今日もお兄ちゃんが帰ってこれないというのでホッとする私がいた。昨日の今日で、まだ顔を合わせにくいのが本音だった。もう少し時間が経てば、きっと前と同じようになれる気がする。それまでの時間が欲しかった。

 私は時間を見るとさほど時間がないのに気づいた。篠崎さんが帰ってくる飛行機が空港に到着する前に色々としないといけないことがあった。こうなってみると、昨日、衣装の件で少し仕事をしていて良かったと思った。

 予約した衣装を取りに行ってから、それを篠崎さんの事務所に届け、それから私は空港に向かった。
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