君をひたすら傷つけて
「こっちのソースは味見して。新作なんだ」

 そういって、雪都はなんだ同じ材料で、見た目は殆ど同じだけど、ソースだけ違うカルパッチョを出してきた。柑橘系の香りが食欲をそそる。口に入れると、鼻腔を抜ける柑橘系の香りが繊細だった。

「美味しいわ。これ好きよ」

「それはよかった。じゃ、別の料理を持ってくるから、待っておけよ」

 そういうと雪都は子供のような無邪気な微笑みを残して、カウンターの奥に戻ってしまった。昔からあまり変わらない姿を見ていると、ホッとしてしまう私がいる。義哉を失って自暴自棄になっていた時期に、たった数か月しかサークルに居なかった私を、友達のように接してくれる。自分の居場所がそこにあったのだと、時間が経った今になって教えてくれる気がした。

 店が混雑をしてきても、雪都は必ず、私と里桜ちゃんの席には料理を運んでくれて、細かく料理の説明をしてくれる。里桜ちゃんも飛行機での移動の疲れがあったのだろうけど、楽しそうに話を聞いているからよかった。

 雪都は本当に明るく話すから、場が明るくなる。

「楽しかったです。とっても……。雪都さんも気さくで優しいし、面白かったです」

「よかったわ。彼の明るさには助けられることもあるもの。自分の悩みが軽くなる。里桜ちゃんが楽しんでくれたならよかった」

「雅さんが一緒にいてくれてよかったです」

「私も里桜ちゃんといると楽しいわ。今から、私の住んでいるマンションでワインでも飲みましょ。泊まっていっていいし」

「でも……」

「いいじゃない。飲みましょ」
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