君をひたすら傷つけて
 雪都の店を出たのはかなり遅くなってからで、思う存分話をした後に、里桜ちゃんとマンションに着いたのは夜も9時を過ぎていた。こんな時間に里桜ちゃんを一人で、二人で住むマンションに帰すのは何となく嫌だった。

「また来いよ」と言う雪都に手を振ってから、マンションに向かう。考えてみれば、お兄ちゃんと一緒に住むマンションにリズとまりえ以外が来るのは里桜ちゃんが初めてだった。マンションに入った里桜ちゃんはお邪魔しますと言った後に、

「綺麗ですね」と呟いた。

 お互いに忙しいし、自分の部屋から私物を共有部分に持ち出すことはないから、リビングもダイニングもモデルルームのように綺麗だと思う。一緒に食事をしたり、飲んだりすることがあったとしても、お互いの線は越えることはなかった。

「リビングはあまり使ってないの。お互いに自分の部屋で過ごすことが多いし、仕事柄、時間もまちまちだからね。さ、私の部屋で飲みましょ。私の部屋は散らかっているから、覚悟してね」

 リビングやダイニングは物が少ない。でも、私の部屋は仕事の書類などがいっぱいある。汚くはないけど、リビングやダイニングに比べたら、物はかなり多い。私の生活空間だった。

 ここに住んで……。楽しいことばかりだった。

 でも、そのうち私はこの部屋を出ることになるだろう。それはそんなに遠い未来ではないと思う。優しい関係で居られなくしたのは私だから、それは仕方のないことだった。

< 960 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop