君をひたすら傷つけて
 里桜ちゃんは部屋に入るとソファに腰かけ、『全然綺麗です』と言ってくれたので少しだけホッとした。

 里桜ちゃんは、私の部屋の向かいにある棚に目を移し、私を見てニッコリと笑う。


「あれは仕事の資料とかですか?」

 そこには雑誌と、雑誌から切り抜いたものがファイリングしてある。リズのアシスタントの時から、デジタルだけでなく、実際に雑誌から切り抜いている。

 もちろん、篠崎さんのスタイリストをし始めてからのは全部ある。今回、飛び入りで参加したコレクションのものもリズが送ってくれるだろう。

「そうなの。全部資料よ。色々な雑誌を取り寄せたりするから資料は溜まる一方なの。流行を全て取り入れるわけでは無いけど、知らないと取り入れられないでしょ」

「大変ですね」

「そうでもないわ。好きなことを仕事にしているから。そうだ、篠崎くんのもあるわよ。後で見る?」

「見たいです。実は篠崎さんと出会うまで、どんな仕事をしてたか知らないので」

 同じ会社の子が騒いでいたので、篠崎海は知っていたけど、顔を知っているぐらいで、喫茶店で会った時も最初は誰だか分からなかったとニコニコ笑いながら里桜ちゃんは言う。でも、そんな自然な里桜ちゃんだから、篠崎さんは恋をしたのかもしれないと思う。俳優としてではなく、篠崎さん個人を見つめる里桜ちゃんだから……。

 あんなにも愛されるだろう。

 溺愛という言葉の意味を私は目の当たりにした気がする。

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