君をひたすら傷つけて
「でも…。海斗さんの仕事の邪魔をするかもしれないし。迷惑かも」

「それは里桜ちゃんが決めることではないわ。里桜ちゃんからの電話を迷惑と篠崎くんが迷惑とは思わないと思う」

「いいです。海斗さんも仕事が忙しいでしょうから、明日になったら連絡します」

 頑なな里桜ちゃんを緩めてあげたいと思い、私はワイングラスをそのままに立ち上がった。

「ワインの飲み過ぎで汗を掻いたかも。悪いけど、先にシャワーを浴びてもいい?そんなに掛からないから、浴びてきたら、また飲みましょ」

 私がこの場からいなくなれば、里桜ちゃんも電話しやすいかもしれない。そんな思いで私は里桜ちゃんを残して、バスルームに入った。服を脱ぎ、頭からシャワーを浴びると念入りに洗うことにした。きっと、リビングでは里桜ちゃんは篠崎さんに連絡をしているだろう。

 数日前に結婚式をして、新婚旅行から戻ってきたばかりなのに、離れ離れ。電話の一本でもすればいいのに、私の遠慮しているのが分かったから、席を外した。少し長めの時間をシャワーを浴びて、身体をタオルで拭くと、鏡の中の自分の身体、左の胸の上に鬱血した後が一つだけあった。

 触るとトクトクと心臓の音がするその場所に、小さな真っ赤な花が咲いていた。どんなつもりで、お兄ちゃんはこれを私の身体に残したのだろう。
< 963 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop