君をひたすら傷つけて

　迎えに来てもらって、タクシーに乗り込むと、まりえは何も言わずにゆっくりと肩を撫でてくれた。そして、私の住むマンションではなく、まりえの住むマンションに連れてこられたのだった。自分の部屋で寝ると言った私の言葉は見事なスルースキルで回避され、私は文句を言う間もなく、まりえの住むマンションのリビングのソファに座らせられていた。

「とりあえず、何かお腹に入れよう。そして、雅の話を聞かせて」

「私の話？」

「そう。雅が寝れなくなるくらいに悩んでいることを話してみるのはどう？少しは話したら楽になると思う。それに、気持ちに素直にならないと解決しないと思うわ。幸いにも今日はウチの旦那さんは残業で遅くなるから、ゆっくり大丈夫よ」

　まりえはリゾットを作ると、私の前に出してくれ、自分にはホットミルクを淹れた。野菜と卵の入ったチーズリゾットは懐かしい味がした。フランスにいる時によく作ってくれたリゾットだった。

「いただきます」

　木のスプーンでゆっくり掬い、口に運ぶと、喉を通り、お腹が温かくなるのを感じた。懐かしい味とまりえの優しさに涙が出そうになる。

「高取さんと何があったの？イタリアで何かあったのでしょ」

「何で？」

「雅が困った時に、真っ先に相談するのは一緒に住んでいる高取さんでしょ。でも、その高取さんに相談しないのか、出来ないのか。まあ、篠崎さんの仕事が忙しく、時間的に相談出来ないという線もあるけど、何となく、高取さん絡みかなって」