君をひたすら傷つけて
まりえは優しく穏やかで見た目はふんわりとしているのに、こういう時の洞察力は凄いと思う。エマがスタジオまで迎えに来させたことで何か感じたのかもしれないけど、それだけではない洞察力が光ったのだろう。
まりえにどこまで話すべきだろうか。素直に全部話したら、まりえはどう思うのだろうか?誤魔化しが通じる相手ではない。私は当たり触りのないことだけをまりえに話すことにした。自分の汚さを言葉にするのを躊躇してしまう。
私は狡いと思う。
篠崎さんと里桜ちゃんの結婚式や結婚パーティを見て、昔、夢見たことが目の前にあって、羨ましいと思ってしまったこと。アルベールに再会したこと。義哉のことを強く思いだしたこと。アルベールにもう一度付き合おうと言われたこと。義哉とは二度と会えないことなど……。順番はめちゃくちゃで思いついた順番に話す私にまりえは穏やかに微笑みながら、手をゆっくりと握った。
「それだけじゃないでしょ」
まりえの言う通りだった。それだけじゃない。私は大事なお兄ちゃんを傷つけた。そして、あの優しい時間も空間も全て自分で壊してしまったのだ。
「高取さんに……甘えた」
「そう。でも、それはいつもでしょ。高取さんは雅のことを最大限甘やかしていると思うわ」
「そうじゃなくて……」
「そうじゃなくて?」
「ワインで酔っ払った勢いで抱いてって言って、義哉の遺伝子が欲しいって、無理やり抱いて貰って。日本に帰ってきて、遺伝子が欲しいなら、俺の子どもを産んで欲しいって言われた。でも、忘れましょって言ったの」
さすがのまりえもイタリアでのことを言うと、飲みかけていたホットミルクをテーブルの上に置いた。
まりえにどこまで話すべきだろうか。素直に全部話したら、まりえはどう思うのだろうか?誤魔化しが通じる相手ではない。私は当たり触りのないことだけをまりえに話すことにした。自分の汚さを言葉にするのを躊躇してしまう。
私は狡いと思う。
篠崎さんと里桜ちゃんの結婚式や結婚パーティを見て、昔、夢見たことが目の前にあって、羨ましいと思ってしまったこと。アルベールに再会したこと。義哉のことを強く思いだしたこと。アルベールにもう一度付き合おうと言われたこと。義哉とは二度と会えないことなど……。順番はめちゃくちゃで思いついた順番に話す私にまりえは穏やかに微笑みながら、手をゆっくりと握った。
「それだけじゃないでしょ」
まりえの言う通りだった。それだけじゃない。私は大事なお兄ちゃんを傷つけた。そして、あの優しい時間も空間も全て自分で壊してしまったのだ。
「高取さんに……甘えた」
「そう。でも、それはいつもでしょ。高取さんは雅のことを最大限甘やかしていると思うわ」
「そうじゃなくて……」
「そうじゃなくて?」
「ワインで酔っ払った勢いで抱いてって言って、義哉の遺伝子が欲しいって、無理やり抱いて貰って。日本に帰ってきて、遺伝子が欲しいなら、俺の子どもを産んで欲しいって言われた。でも、忘れましょって言ったの」
さすがのまりえもイタリアでのことを言うと、飲みかけていたホットミルクをテーブルの上に置いた。