君をひたすら傷つけて
 私がエマの事務所を出たのは昼を過ぎた頃のことだった。

 リズは私の身体に負担が無いようにと、荷物を運ぶスタッフを雇ってくれたので、協力して衣装を始めとした小物を持ち込むことになった。スタジオに入り、ハンガーに掛けた服から、ビニールを外して準備をしていると、徐々にスタッフが入ってきた。

「今日はよろしくお願いします」

「あ、藤堂さん。久しぶり。今日は藤堂さんが担当なの?」

「はい。後ほど、リズも来ますので、一緒に頑張らせて貰います」

「そっか。そっか。篠崎さんも藤堂さんがスタイリストに入るなら、いつも以上にいい表情をしてくれるね。今日の撮影が楽しみだよ」

「篠崎さんは元々が素敵な方ですから」

「まあ、それは認めるけど、いい撮影をしたいなら、周りをいいスタッフで固めることも大事なんだよ。リズさんもいいけど、藤堂さんが篠崎さんの正担当だからね」

「いえいえ。そんな」

「だって、リズさんも篠崎さんも前に撮影をした時に、篠崎海の専属スタイリストは藤堂さんって言っていたよ。体調不良だったんでしょ。無理しないで、体調が悪くなったらいつでも言ってね。さ、今日も一緒に頑張ろう」

 日本に帰国してから、ずっと、篠崎さんの専属スタイリストをしていたから、見知ったスタッフも多かった。その誰もが私のことを『篠崎さんの専属スタイリスト』と言う。

 仕事を離れていた時期が長くなってきていたのに、リズだけでなく、篠崎さんも私の場所を残してくれるように動いていてくれたことに驚いた。
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